新設された法人税法22条の2の研究の一環として、22条の2第4項及び5項をめぐる問題を考察する。具体的には、両規定の創設の背景を整理した上で、資産の販売等に係る収益の額について時価ないし適正な価額による益金算入を定める4項について、どの時点で評価(本稿では、便宜上、文脈に応じて「収益の額の算定」の意味で「評価」という語を用いる場合がある)するか、評価の対象は何か、どのような方法・基準で評価するかという観点から考察を加える。そして、課税要件法定主義や課税要件明確主義に加えて、法的安定性・予測可能性の確保、恣意的行政の排除といった見地からは、資産の販売等に係る収益の益金算入額について、移転価格税制のように、収益の額の算定方法等に関する詳細な規定の導入を正面から、腰を据えて検討すべきではなかったかという、平成30年度税制改正に対する批判的見方を示す。また、貸倒れの可能性や資産の買戻しの可能性を織り込んで対価の額が合意された場合の取扱いに関して5項が抱える問題点を指摘する。