新設された法人税法22条の2の研究の一環として、同条1項の引渡概念ないし引渡基準の意義を中心に検討する。具体的には、法人税基本通達が掲げ、同項も明定した引渡しと、権利確定主義・無条件請求権説・実現主義・管理支配基準との関係、民法上の引渡しとの関係、収益認識会計基準における履行義務充足基準との関係を考察する。同項は、これまで通達によって採用されてきた引渡概念ないし引渡基準を条文化し、柔軟性・弾力性をビルトインしたものであるがそのまま条文化したものではないし、引渡概念が明文化された以上、それは、より法的なものへと純化していく、さらにいえば法人税法固有の概念としての性格が色濃くなっていく可能性と権利確定主義を含むこれまで積み重ねられてきた22条2項や4項に関する議論が22条の2の適用領域においても有効である可能性を論じる。併せて、例外的なケースにおいて具体的妥当性の確保が困難になるという条文化したことの弊害の存在を指摘する。 |