以上の問いに迫るためには、まず、ダンスの身体表現に見合ったメディアを介して、踊る実践の過程が記録され、思考されなければならない。そのメディアが映像である。「踊る身体ということば」がダイレクトに文字メディアに置き換えられる場合、そのコミュニケーションの意味の多くは捨象されることになるだろう。踊る際の身ぶりや手ぶり、表情や視線、身体のリズムや躍動、声や吐息、空間に響き渡る音楽や環境音、そして踊る身体同士の呼応は、「文字にならないことば」であり、「光と音の運動」として、つまり映像としてならば十全にとらえることができ、第三者とも共有することができる。そこで、ダンスをする学生メンバーが代わる代わるその様子を撮影し、私もサブカメラで彼女・彼らの踊りを撮影した。 次に、「踊る身体」として自己をプロジェクトしていくとどのような変容が起こるのかについて理解するために、2022年4月より本格的に、学生メンバーに対するインタビューを複数回実施した。これは、9か月間に及ぶダンス・ワークショップを通じて、自己のとらえ方や人との関わり方、生活の仕方等がどのように変わったのかを、そのベースにある生活史を含めて聞き取るライフストーリー・インタビューである。インタビュアーの鈴木さんが聞き取った学生メンバーの語りを学生自身が読み解いて加筆修正しながら原稿を作成、私による再インタビューを加えるかたちで録音し、発表用の音声データとした。 以上のような実践および調査で得られた質的データを、学生メンバーとともに編集=省察して映像ドキュメントとしてまとめ、上映=発表する予定である。