本研究の目的は,一般教員が学校管理職を志向する規定要因を探索的に検討することであった。まず,予備調査Ⅰで管理職候補者を対象にインタビューを行い,過去の職務上での経験,教員として現在持っている効力感や職業観,認知,将来展望としての学校管理職志向に関連する要因が収集された。次に,予備調査Ⅱで,校長候補者に自由記述調査を行い,ロールモデルとなる管理職の人物像,公立学校教員職業観に関するより詳細な内容を収集した。それを踏まえ,本調査では,全国公立小・中学校の一般教員を対象にweb 調査を実施し,学校管理職に影響を与える要因について,重回帰分析を用いて検討した。その結果,学校マネジメント経験から得た「職務達成感」と,「専門的識見・改革型リーダー機能」を有するロールモデルとの出会いが,「組織貢献効力感」「校長職に対する肯定的認知」の2変数を介して,学校管理職志向に間接的に影響を与えることが明らかになった。
※本論文は、筑波大学大学院人間総合科学研究科生涯発達専攻博士前期課程 修士論文「教員の管理職志向への影響要因-ロールモデルとマネジメント経験に焦点をあてて-」の一部を加筆・修正したものを日本教育心理学会の教育心理学研究に投稿し、採択されたものである。よって第二著者 飯田順子は、第一著者の指導教官にあたることから共著となる。