本稿においては、3つの東京五輪(1940年幻の五輪・1964年・2020年)時のオリンピックをめぐる学びに焦点をあて、それぞれの時期にオリンピックの理解をねらって刊行された、いわゆる「読本」と呼ばれる教材類を手がかりとして、日本のオリンピック教育の一端を明らかにすることを目指した。
読本の検討に際しては、「オリンピック精神」・「オリンピズム」等と表現されるオリンピックを駆動する理念がどのように言及されているかにも着目した。
そしていずれの読本でも、近代オリンピックおよびオリンピズムの創案者であるクーベルタンの見解を引用するに留まらず、各時代や社会の文脈に引き寄せながらオリンピックの意義や目的を示していることを確認した。