渋滞問題のモデルであるTASEPにおいてKPZ 固定点が得られることを示した
相互作用粒子系や界面成長モデルにおいて、粒子の位置等に着目すると空間の次元が1次元の場合、ゆらぎは時間の1/3乗で成長するといったモデルの詳細に依らない性質に注目が集まっています。この性質をKardar-Parisi-Zhang(KPZ)普遍性と言い、この普遍性を持つモデルを総称してKPZクラスと呼びます。近年 Quastel氏らはKPZ クラスを特徴付けると予想される分布関数の一群を提唱し、これらをKPZ固定点と呼びました。交通流のモデルの中の一つであり、渋滞問題を考える際に用いられるTASEPは可解な構造を持っていて、実際に計算できるモデルであるため、KPZ クラスの性質を調べる上で重要なモデルです。先行研究として、連続時間TASEPという特定のモデルでKPZ固定点が得られています。KPZ固定点は中心極限定理と同様に非常に一般に成り立つ普遍性の高いものであると予想されていますが、数学的に証明されておらず様々なモデルで検証することが現時点では重要です。そのため、本論文では、離散時間Bernoulli TASEPと長距離飛躍モデルである離散時間幾何TASEPにおいてKPZ固定点が得られることを示した