本稿の目的は、経営者が有する自己または自社の将来業績に対する「自信過剰」が、自己株式取得の意思決定に及ぼす影響について、日本における実証的証拠を提供することにある。検証の結果、第1に、全体として、自信過剰な経営者によって経営される企業ほど、自己株式の取得は実施されない傾向にあること、第2に、配当と自己株式取得の代替性が弱い企業の場合のみ、上記の傾向が観察されることが示された。本稿では、日本と米国の間で見られる配当・自己株式取得の代替性の相違に着目することで、日米で経営者の自信と自己株式取得の間に見られる関係が相違する可能性があることを発見している。以上の結果から、経営者の心理的特性(自信過剰)が特定の資本政策に及ぼす影響は、国・制度的環境の相違に応じて必ずしも同一にならないことが指摘でき、国際的な証拠の蓄積に本稿は貢献しているといえる。