本研究は,消費者が製品の素材から知覚する「ぬくもり」が購買意向に及ぼす影響を検
証した。住居空間や製品に対して,人は「ぬくもり」を知覚することがある。先行研究に
よると,「ぬくもり」とは肌で感じる物理的な温かさではなく,対人的な安らぎを伴う視
知覚の温かさであり,心理的な温かさを含む。そこで,「ぬくもり」を感じやすい素材を
用いる製品は消費者の購買意向を高めるが,その効果は消費者が「ぬくもり」を知覚する
ことが媒介して生じると想定される。さらに,このような「ぬくもり」を感じやすい素材
が購買意向に及ぼす影響には,個人が「ぬくもり」をどの程度欲求するのかという「ぬく
もり欲求」の程度が個人差として調整役割を果たすと仮説が立てられた。上述の仮説を検
証するために,一般消費者を対象とした実験を行った。その結果,「ぬくもり」を感じや
すい素材の製品を見ると「ぬくもり」の知覚が高まり,「ぬくもり」の知覚が媒介して購
買意向が高まることが確認された。さらにこの効果は,消費者の「ぬくもり欲求」が高い
と購買意向をより高めることが明らかになった。