本論文は、四国八十八ヶ所寺院を巡る遍路(巡礼者)が経験する四国遍路の世界において、遍路の自己がどのように再構築されるのかを、歩き遍路・加賀さんのライフストーリーの詳細な検討によって探究したものである。 「自己の再構築」には、他者とのコミュニケーションの結び方の再編成がともなう。世俗の主従関係がほどかれることで現れる四国遍路の人間関係の編成を、筆者は「縁の再構築」と呼び、そのありようを、巡礼する「遍路」と遍路に施しを与える地元の「お接待者」の関係(遍路・加賀さんと地域住民Mさんの関係)、そして「遍路」同士の関係(加賀さんと遍路として彼に出会った筆者の関係)という三者関係の変容を事例に明らかにした。