( 著者「長尾雄行, 土屋陽介, 森本祥一, 中鉢欣秀」)ネットワーク環境下において協調作業を実現する試みは従来から様々なアプローチがなされているが,ファイアウォールやプロトコル制限といったセキュリティ上の制約から,今日のような多様なインターネット接続形態から利用できるツールを構築することは難しい.よって本稿では,インターネット上で最も汎用的なプロトコルであるHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)を用いて,協調作業の要となる複数ユーザのマウスカーソルをWebアプリケーションにおいて実時間で可視化するMultiple Pointers System(MPS)を提案する.MPSはミドルウェアであり,Webブラウザ上で動作するクライアントモジュールとWebサーバで稼動するサーバモジュールからなる.クライアントモジュールにはJavaScriptと非同期HTTPリクエストのみを利用するため,端末側に追加のドライバやプラグインをインストールする必要がなく,様々なインターネット接続環境において利用可能な協調作業用Webアプリケーションを構築できる.本研究で実装したMPSが,リアルタイムに更新される多数のマウスカーソルを見ながらWebページ上で共同作業ができる十分な性能を備えることを,実験により確認した.