日本の雇用政策・労使関係の現状と課題について、ヨーロッパにおけるフレクシキュリティ政策との比較を念頭に検討した。現在、安倍政権による「失業なき労働移動」を目指す雇用政策は、労働者の安定性に対する施策を欠落させた一方で、従来以上に日本の労働市場を流動化させようとしている。ヨーロッパにおいてフレクシキュリティが議論される前提には、産業別労働組合による強力な労働市場規制の存在がある。しかし、日本では、総じて労働組合による労働市場規制は脆弱であり、もし雇用柔軟化政策が推進されれば労働市場は底が抜けるであろう。