サステイナビリティの実現を目指すこと(Sustainability Approach: SA)とウェルビーイングの実現を目指すこと(Well-being Approach: WA)が整合的でないとの議論を踏まえ,個別具体の都市/地域空間(長野県上田市)のあり方を通じてSAとWAの両概念を統合できる可能性について論じた。
最初に,現在の上田市民のウェルビーイングの状況を示し,そこから都市/地域という個別・具体の空間でSAとWAを統合する必要性を見出した。いずれか一方のみに着目する場合,民主主義の軽視やスプロール化の助長につながり,根本的な課題解決に至らないことを明らかにした。
次に,現在の都市が抱える構造的・歴史的な背景を考察し,自動車を中心とした既存の都市/地域空間のあり方を所与とすれば,SAとWAを統合できないことを明らかにした。現在の主流である都市計画におけるモダニズムは,必然的に残余化された人々のウェルビーイングという課題を抱えることになる。
最後に,SAとWAの概念を統合した都市の具体的な姿を考察し,生活・経済を営むために必要な都市機能に徒歩あるいは公共交通で容易にアクセスできる一定の密度でアフォーダブルな住宅が集まっている都市/地域空間が,SAとWAの統合となることを示した。