杉本卓也・手嶋進 著
大学の社会的責任の一つとして,教育研究機関として学生がその活動を通じて持続可 能な社会の構築に貢献できるようなマインドを養い,必要な知識やスキルを修得できる 機会を作る責任がある。課題解決型教育やキャリア教育等における PBL(project-based learning)は,そのようなサステナビリティ人材を育成する方法の一つである。
千葉商科大学では,自然エネルギー 100%大学の取り組みの一つとして,学生団体 SONE が 2018 年 3 月に設立され,学生や教職員向けに省エネのための意識啓発活動を推 進している。2022 年度は教室の断熱化プロジェクトが立ち上がり,断熱化の施工を施工 会社に任せるのではなく,「自分事化する」ためのワークショップ形式として企画,実施 された。この教室断熱化プロジェクトでは,施設管理としての学校法人への説得と協力の 取り付けだけでなく,設計や施工といった外部協力者との連携や調整も学生が担当した。
本研究では,省エネの意識啓発を担う学生団体 SONE の学生を対象として,仕事の遂 行に関わる能力とサステナビリティの考え方を身につけたかについて本人たちがどのよ うに自己評価しているか,インタビュー調査を行った。
調査の結果,仕事の遂行に関わる能力については,活動への関わりを通じてコミュニ ケーション能力やプロジェクト管理について,学生自身が成長を実感していることが把 握された。他方で,活動することにより自分自身の能力が不十分だと認識する機会とな り,自己評価を活動前よりも厳しくし査定する学生も見られた。サステナビリティの考 え方については,本研究で扱ったサステナビリティ・マインドセットが抽象的であった ものの,活動とサステナビリティの考え方や行動様式との間に部分的ではあるが共通点 や共感を示す学生が把握された。