課税訴訟における理由の差替えの許否の判断基準は,「理由付記制度の趣旨」を没却す るか又は納税者に「格別の不利益」を与えるかである。「基本的な課税要件事実の同一性」 は,それ単独で理由の差替えの許否の判断基準となるものではなく,「理由付記制度の趣旨」 を没却するかという点や「格別の不利益」を与えるかという点を判断する際の 1 つの重要 な考慮事情ないし要素である。 サンリオ事件(東京地裁令和 3 年 2 月 26 日判決・判例集未登載)について考察すると, 本件では適用除外基準が問題となっており,広い意味で争点が同一であり,「基本的な課 税要件事実の同一性」が認められる,前提となる事実関係は共通であるという見方があり うるが,反論も考えられる。もっとも,納税者が確定申告書に適用除外記載書面を添付し たかどうかという事実は,納税者が当然に把握し,熟知しているはずのものである上,本 件において添付しなかった事実は明白であり,課税庁のみならず納税者も認めるところで あるから,仮に理由の差替え前後で「基本的な課税要件事実の同一性」が認められないと いう評価が妥当するとしても,「理由付記制度の趣旨」を没却しない又は「格別の不利益」 を納税者に与えない特段の事情が存在するという判断に行き着く可能性がある。