借地(権)の無償返還につき、立退料等相当額を益金の額に算入する課税処分の適法性が争われた国税不服審判所平成22年7月9日裁決について、法人税法22条との関係を考察せずに、通達に固執する裁決の態度には疑問を呈する余地もあるが、本件裁決が最終的には通達の記載内容に縛られずに柔軟な解決を図ったこと自体は評価されることを指摘する。かような本件裁決は、例えば、「自然発生借地権」という税法固有の権利があるかのような誤解を招く用語が使用されるなど、いまだ“法務色(職)”よりも“税務色(職)”の要素が濃い借地権課税の領域に対して、法的視座からの観察を行う際に有益な事例である。