本稿では、暗号資産の譲渡による所得は譲渡所得ではなく、原則として雑所得になるとする国税庁の見解に対する疑問①(暗号資産の譲渡による所得が譲渡所得に該当する余地を認めるものであるか)及び疑問②(なぜ暗号資産の譲渡による所得が原則として雑所得となるのか)と、各疑問に関連して国税庁の見解の妥当性について考察を行った。
具体的には、国会における議論を手掛かりとして、次のことを明らかにした。国税庁は譲渡所得に関する清算課税説を前提として、暗号資産の支払手段性を強調することにより、その譲渡による所得は、外貨と同様に、資産の値上がりによる譲渡所得とは性質を異にすると解している。また、暗号資産は資産ではあるが譲渡所得の基因となる資産(所得税法33条にいう資産)には該当しないという資産性否定説を採用している。よって、重点的に検討すべきは、暗号資産が譲渡所得の基因となる資産に該当するかという点である。その上で、資産性否定説について、更に展開させる可能性を抱懐しつつも、所得税法33条の解釈論及び暗号資産の支払手段該当性という観点と、外貨の課税関係との整合性という観点から、疑問を提起した。