高齢化の進展等の社会経済情勢の変化に対応するために、今回の民法改正(民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)) では、相続が開始した場合における配偶者の居住の権利が新設された。本稿は、相続税等の課税関係に影響を及ぼす改正であることを考慮し、当該居住の権利(配偶者居住権及び配偶者短期居住権)の内容等を概観した上で、その財産性について考察し、次のような指摘を行っている。配偶者居住権について、その評価方法に関する議論を詰める必要がある。仮に通達等で政策的な考慮を働かせる形で評価方法が定められるとすると、先述の時価の定義との調和が問題となりうる。賃借権類似の権利として議論を進めるとしても、両権利はあくまで別のものであり、相違点もあることへの配慮が必要であろう。配偶者短期居住権については、相続税法上の評価を議論する前に、そもそも「相続又は遺贈により取得した」財産であるのかが問われる。