国税不服審判所平成28年7月7日裁決(裁決事例集未登載)は、法人である審査請求人が、優に5年を超えて支配関係にある100%子会社(本件旧子会社)を合併し、本件旧子会社の法人税法57条2項に規定する未処理欠損金額(繰越欠損金)を引き継いだ事案において、組織再編成に係る租税回避否認規定である同法132条の2を適用して上記繰越欠損金の引継ぎを否認する課税処分の適法性を認めた。本稿は、本裁決を機縁として、いまだ明確とはいえない同条の適用の有無に係る判断基準に対して、労働法分野等において蓄積されてきた実質的同一性(実体的同一性)に関する議論から示唆を得て、考察を加えるものである。