日本の中小企業の多くは同族会社であり、一族の役員報酬を調整する税務戦略が広く行われている。しかし、従来の労働分配率は分子の人件費に一族の役員報酬と労働者の賃金を合算するため、付加価値が最終的に誰に帰属しているのかを明らかにできなかった。また、同族会社では節税のために利益が圧縮され、配当も活用されにくいため、ROEなど利益を基礎とする指標は実態を反映しない。そこで本稿は、労働分配率を役員報酬分配率と賃金分配率に分解し、役員報酬が賃金の何倍であるかを示す「役員報酬の生産性」指標を提言する。この指標は、付加価値計算を経ずに、損益計算書の役員報酬と賃金の額のみから算出できる。『第14次業種別審査辞典』の2018年度データを用いて全企業ベースで試算した結果、役員報酬の生産性はガソリンスタンドで0.27、形成・美容外科で0.87、保育所で0.16となり、業種によって付加価値分配の構造が大きく異なることが示された。