わが国の税制が依拠する「公平・中立・簡素」の租税原則は租税法を媒介として正義観念と結びつけることができる。租税法の基本原則である租税法律主義は、「形式的正義⇒手続的正義⇒適法的正義」に連なる「形式的体系」に、また租税公平主義は「形式的正義⇒手続的正義⇒実質的正義」に連なる「実質的体系」に体系づけられ、租税回避事件では英米法の「衡平(エクイティ)」に依拠する司法的正義が実現される場合がある。租税特別措置は租税原則の要請に適合せず高度成長期の功利主義的政策の産物と考えられるが、今後はロールズが提起した「格差原理」にもとづく租税正義観からの見直しが必要であることを主張した。