本稿では事例企業キヤノンの内部環境マネジメント・コントロール・システムの構造を 明らかにすることを目的とする。調査から同社の中核的価値は「技術」にあるとしたが, こうした経済バリューズの追求のみでは,企業構成員から持続的な貢献をもたらすことは難しい。事例企業は経済バリューズの追求・実現とともに,CSR バリューズをその対立軸とし,各期内だけでなく期間にわたる均衡(バランス)もとるように活動内容を充実させていた。現在事例企業は経済活動のグローバル化にともない,一企業体のみではとうてい解決しえない地球環境問題への取り組みを重視し始めている。これは同社の経済活動がそれほどまで大規模化したことを含意している。つまり企業の経済活動と CSR 活動は表裏一体のものとして取り組んでいくことが,長期継続的な企業経営にとって有効であると主張した。さらに多次元・両極という均衡的な同社の組織文化構造は,他社に容易に模倣しえない競争優位性を発揮していると指摘した。最終的にこうしたシステムの構造分析をふまえ,同社の今後に有効な環境戦略・マネジメント・コントロールの展開方向性を提言した。