企業は環境経営の活動の目的や成果を構成員に伝達することも重要であるが、そのコミュニケーション・プロセスを本論文では内部環境マネジメント・コントロールとよぶ。本論文は、環境戦略に資する内部環境マネジメント・コントロールの機能と構造を先行研究をもとに分析・解釈することを目的とする。内部環境マネジメント・コントロールは、企業構成員に共有された信条や価値観、伝統によるコントロールであり、効果的な展開のためにはまずそれらに対する適切な理解が前提となる。ここでマネジャに求められるのは、企業構成員との協働などを通じて、彼らとの深い共感を踏まえて組織文化を解釈することと洞察力を働かせることである。また、企業構成員に共有された信条や価値観、伝統に対する正しい理解にもとづいた非公式システム(CSRプログラムなど)は、組織の通常の経済活動の原理である公式システムと有機的にリンクさせることが望ましい。それは、公式システムは非公式システムを通して構成員に①物質的満足感、②組織内正統性を付与するからであり、企業構成員の環境モチベーションに対する正しい理解は非公式システムを通して公式システムに①適切な公式システムの設計、②効果的な活用をもたらしうるからである。そしてCostas and Karreman(2013)の再検討により、企業は内部環境マネジメント・コントロール・システムの活用によって、企業構成員に「善行とは何か。」を内省させ、より良い企業と社会のあり方を試行錯誤させるよう促すことを明らかにした。