本稿は,筆者が既に発表している「人間モデル」を人間諸科学の援用によって基礎付けしようという試みである。人間諸科学(精神科学,脳科学)や社会生物学の知見から,個体を素朴に考える方法論的個人主義と一切の先天的能力を認めようとしない社会構成主義,のどちらも問題があることを確認した。
さらに,これらの学問から,ヒトは利己的であることと,利他的であることの2 つの矛盾する性質を保持していることを導出し,さらにこれらのヒトの本性と筆者の人間モデル(求心欲,勢力欲,遠心欲を保持するヒト)との突き合わせを行うことで,同モデルを基礎づけることができた。