近年、SDGsをはじめとして、企業には持続可能な開発に参画する社会的な責任主体としての自覚が求められている。これに対する企業側の回答の一つが環境経営であるが、その全体像は依然として不明瞭である。そこで、本稿は環境経営の輪郭を少しでも明確化するため、経済学を例に、社会科学の環境への接近方法の歴史を概観した。経済学の趣旨が有限な資源・環境制約の下での最適な資源配分の実現であることに鑑みれば、経済学が現在の持続可能の考え方に通底することは明らかである。
実際、本稿では古典派経済学における定常状態や厚生経済学における外部性という概念から経済学が持続可能や環境という問題に実際に対峙してきたことを確認した。もっとも、経済学の関心はこれらの要素を市場化することにあるため、経営者や組織といった非市場的要因が重要となる環境経営への経済学からの接近には限界がある。そのため、環境経営には、経営学からの接近が不可欠となる。