今日、CSRの視座は企業経営にとって欠くことのできないものとなっている。しかし、CSRは我が国には「企業と社会」論といった視点でアメリカから第二次世界大戦後導入された新たな考え方である。だが、我が国の企業においては、既に三方よしの考え方が歴史的に根付いていた。
以上から本稿においては、この「企業と社会」論と三方よしの2つの考え方の差異とその可能性を論じ、現在のCSRの端緒を論及しようとするものである。
そこで、着目したのは、アメリカから引き受けた「企業と社会」論が1960年代において「企業の社会的責任論」となり企業の自発性を促すものとなったことである。また、それは、1970年代においては「企業の社会的即応性論」へと変質し、ステークホルダーへの応答が求められていった。それは企業の自発性では社会的責任が担保できなかったからである。
そのため、1980年代になると企業の倫理性が問われることとなり、企業倫理は企業に求められることになる。このようにして、CSRの端緒は変質し、1990年代に入り、この「企業と社会」論の総体として「受託原理」と「慈善原理」といった二大原理が企業に課せられていくのである。つまり、考え方の発展段階が我が国の三方よしとどのように連動し、どの点で異なってきたのかをここで明らかにした。