本稿では、電子帳簿保存法の改正と適格インボイス制度の創設を概観し、日本版電子インボイスの会計業務にもたらす可能性を考えてみた。
「法令改正」という観点だけで見れば、実務では適格請求書の様式を採用し、消費税について適正に仕入税額控除を行うこととなるが、軽減税率及び適格請求書が導入されたことによって、消費税の会計業務の対応が複雑になり、これまで以上に業務負荷が増えることは明らかである。日本版電子インボイスが確立され、「適格請求書発行事業者公表サイト」の検索とリンクするシステムが構築されれば、想定される業務負荷を減らし、業務のデジタル化を実現することにもつながる。
わが国の現状は「デジタル敗戦」と揶揄されるが、電子インボイスの導入は、事務効率、経営効率の向上に向けた絶好のチャンスでもある。国税庁においては、ICTの活用による「納税者の利便性の向上」と「課税・徴収の効率化・高度化」を目指していくこととしており、これを実現するためのインフラとして、2026年度の本格導入に向けて、次世代システムの開発に着手している<!--[if !supportFootnotes]-->。このような次世代システムが完成し、日本版電子インボイスが確立された場合には、韓国のように、毎月、納税者に課税当局への電子インボイスの提出を義務化すれば、一気に電子インボイスが普及するのではないかと考える<!--[if !supportFootnotes]-->。また、近時EUで問題となっているカルーセルスキーム(消費税の納税なき仕入税額控除)に対処するためにも、毎月電子インボイスの提出義務化による情報収集が必要である。これにより、決算月のズレ等によるカルーセルスキームの防止につながるのではないかと考える。
企業には今後、インボイス制度に向けて適格請求書の発行準備とともに、電子インボイスの導入準備も求められることになるであろう。 <!--[if !supportFootnotes]-->