本報告では，授業改善サイクルで用いられるADDIEモデル（ガニェら，2007）を用いて，大学体育授業の再設計を行なった事例について紹介する．まず分析（Analysis）では，大学のディプロマポリシーを理解し，担当科目がカリキュラム編成方針上どのような位置づけにあるのかを確認した．次に設計（Design）として，分析に基づいた学習目標や評価方法を明確にし，シラバスの再設計を行なった．さらに開発（Development）段階では，シラバスの再設計にともない，学生が学習目標を達成するために必要な教材として，身につける能力について記述させる，ワークブックを作成した．そのワークブックを用いた授業を実施（Implementation）し，授業展開やワークブックが，学習目標達成に適したものであったかを評価（Evaluation）した．評価の結果，ワークブックを活用することにより，学生の能動的な活動を促進することができた．また技能レベルによって，ワークブックの記述内容が異なることが明らかとなり，今後の授業改善において有益な情報を得ることができた．このことから，ADDIEモデルを用いた大学体育授業の再設計は，学習効果を高めるために有用であることが示唆された．
