消費者行動論的なブランドの立場、特にブランドの自己表現機能に関する探索的研究である。
ブランドの使用によって平常時と異なる自己概念が喚起するというリサーチクエスチョンを持ち、消費者の平常時の自己概念と、ブランド使用時の自己概念を比較検討した。自己概念を測定する方法として、20答法(Kuhn & McParland, 1954)を採用し、都内の私立大学の学生200名から得たテキストデータを使用した。分析では共起ネットワークを作成し、平常時とブランド使用時のそれを比較した。
その結果、発見したことのひとつは、ブランド使用時の方が喚起する自己概念の複雑さが低減すること(自己概念がシンプルになること)である。作動自己概念(榎本 1998)の示唆することと同じ結果であった。
もうひとつは、ブランド使用時での自己概念の具体的内容は、よりポジティブなものになるという発見があった。カギとなる語として「なる」があった。平常時の自己概念は、助動詞「たい」と組み合わさって「なりたい」が主であったが、ブランド使用時は「たい」との共起する比率が大きく差があり、「なる」単独でしようされること、つまり、より能動的な自己概念が喚起していることが分かった。