地域社会は少子高齢化や人口減少,地域経済の衰退により,労働力の不足や耕作放棄地の拡大,伝統文化の消滅,気候変動の影響による災害の頻発など,様々な喫緊の課題を抱えている。このようなことから,持続可能性を高めるための最初の段階として将来社会像の作成が多くの地域で進められている。
これら持続可能な将来社会像の作成では,市民が望むまたはあるべき姿という視点が重要とされているが,実現に向けては地域社会の人口や経済規模,環境容量などの指標との整合性がとれており,具体的な施策や事業,活動へと展開される必要があることから,市民への受容性の高さが求められる。
本研究では,滋賀県高島市の行政事業である第2期高島市まちづくり推進会議のワークショップ運営の実践を通じ,市民への受容性や実現可能性が高い持続可能な地域将来社会像の作成を試み,検討プロセスの議論や将来社会像を構成するストーリーラインを,テキストマイニング手法などによる構造化を通じて分析し,求められる地域社会を構成する要素や条件を抽出することを目的とした。
その結果,市民の望む将来社会像の作成においては,地域に多く賦存するなど地域社会の成り立ちに深く関係する森林資源などの地域資源の活用を通じた地域課題解決の側面が強く意識されており,これらの活用においては,活動基盤として社会関係資本が蓄積された地域コミュニティが形成されていることが前提となっていることがわかった。