本稿では,観光農園「エザワフルーツランド」(千葉県木更津市,代表:江澤貞雄)を中心として展開される無農薬ブルーベリー観光農園事業を事例として,観光による久留里線沿線地域活性化の可能性について検討を行った。
同地域では人口減少,高齢化,地域産業の衰退などの社会的課題に直面している。無農薬ブルーベリー観光農園事業は無農薬・無化学肥料栽培による安全・安心な商品づくり,耕作放棄地の活用,栽培面積と生産量の増加,行政・企業等との連携による観光客誘致・来園者数増加などの社会的・経済的成果を達成してきた。これらを可能にした新しい栽培方法「ど根性栽培」を採用する農家数が増え社会的関心も高まってきており,我が国にブルーベリー栽培が導入された1951年以来主流であった栽培習慣に変革を起こしはじめている。
こうしたプロセスを,ソーシャル・イノベーションの創出と普及の理論に基づき,多様なステイクホルダーとの協働に着目して分析した。