社会的分化という社会理論の基礎的視角は、従来のヴェーバー研究において「発展」や「合理化」の概念の影に隠され、正面から扱われてこなかったきらいがある。しかし、ヴェーバーのテキストは「分化」の概念に満ちているし、またたとえば『中間考察』で論じられた宗教と生活諸領域の緊張関係論の基礎とも言える。本稿では、ヴェーバーが自らの社会学の概念的基礎を据えた『カテゴリー』論文を対象に、(1)発展の非一元的な双方向性、(2)解体と創出のダイナミズム、(3)重層的関係、(4)圏域の多様化・同時併存などの点を析出し、「近代化」論とは異なるヴェーバーの歴史的動態論の基礎概念の構成を明らかにした。