「特集:近代と現代の対話――個人化論を通して――」。本稿では、ノルベルト・エリアスの議論にもとづき、個人化が文明化と並行して進展している歴史的過程を検討した。そこで、中世の「封建化の過程」から近世の「宮廷化の過程」を経て現代社会の「個人化」にいたる、約一千年にわたる他者意識の高度化のプロセスを抽出し、身体と自意識の発展と、国家形態の発展との関係を明らかにした。従来のエリアス理解では、単に礼儀作法の高度化と自意識の変容としてのみ理解されていた文明化論に、国家の発展の議論を重ねあわせ、個人化との関わりから論じたものである。