本稿は,コーポレート・ガバナンスの議論において多元的企業観の立場からステイクホルダーとの協働が重視されていることを踏まえ,かかる協働を適切に行うために経営者に求められるアカウンタビリティについて論じている。考察にあたり,これまでに展開されてきたコーポレート・ガバナンス問題に関する議論,会計との関わりにおけるアカウンタビリティの議論,協働におけるアカウンタビリティを論じた拙稿に手掛かりを求めている。
考察の結果,価値の提案を含む共通目的の設定に関する経営者のアカウンタビリティがステイクホルダーとの協働において重要であること,これを適切に果たす上で取締役会に期待される役割,及び提案の理由説明における方法上の課題が導かれた。