日本は世界第3位の経済規模をもつ経済大国であるが、2000年以降、貧困問題は再び可視化されるようになった。貧困対策といえば、まず最後のセーフティーネットである生活保護制度が思い浮かぶであろう。実際、戦後日本の社会保障の施策は生活保護制度から始まったといっても過言ではない。では、なぜ歴史が長く、内容が充実している生活保護制度が貧困問題にうまく対応できなくなったのだろうか。本論文は歴史分析の手法を用いて、厚生白書を材料に、この問題の解釈を試みた。2000年代の貧困問題の顕在化は1980年代および1990年代の行政運営に一因があるというのが本論の結論である。