最後のセーフティネットの構築―「全民低保」を超えて
本論文は中国の公的扶助の基軸制度である最低生活保障制度に焦点を当て、1993年の社会救済制度の改革から2014年までの約20年間を考察した。2006年以降のポスト改革期における最も大きな成果は「全民低保」の実現と包括的公的扶助制度体系の形成であるが、対象拡大・制度内容の充実といった普遍主義的制度の流れと給付削減・ワークフェアの流れが共に存在していた。今後、中国における最後のセーフティネットの構築がどのように量的拡大から質的向上へと転換していくのかが課題である。
沈潔・澤田ゆかり編著『ポスト改革期の中国社会保障はどうなるのか』ミネルヴァ書房
106~141