中国の最低生活保障制度は、①「最後のより処」というセーフティネットの維持、②「貧困の罠」、「福祉依存の罠」を回避し、労働インセンティブを高めることによる財政的負荷の軽減、という2つの要請の狭間で呻吟している。1999年に国有企業から排出された大量の余剰人員のために創設されたこの制度は、2000年以降、①に対応するため、「応保尽保」による適用対象の包摂、「分類施保」によるニーズに対する確実な保障、②に対応するため、労働能力をもつ者に対する給付基準の引き下げ、ハードなワークフェアが行われ、いわば選別主義の拡充と選別主義の限定化が並行している状況である。本論文はその展開過程を考察することによって、制度が直面している課題を明らかにした。