鯨類が半球睡眠を行う目的は,呼吸の確保や警戒,体温保持などが挙げられているが,それぞれの仮説について詳細な検証は行われていない.本研究では,哺乳類の生存に不可欠である体温保持に着目し,環境水温の違い(高温期と低温期)が睡眠特性に与える影響を検討した.結果.1)環境水温比較で休息総量に差はない.2)低温期に遊泳休息が有意に増加し,高温期に停止型休息が有意に増加.3)冬季には覚醒中の活動度も有意に増加.これらの結果は,体温保持仮説が半球睡眠を持つ理由の少なくともひとつであることを支持するとともに,低温期には一日を通して活動量を高めて体温を保っている可能性を示唆する.