動物全般において,若齢個体は成熟個体よりも多くの睡眠を必要とする.これは哺乳類に限らず,ショウジョウバエにおいても同様であることなどを本書第1章に紹介した.ところがイルカの場合,オトナよりも仔イルカにおいて,睡眠量が少なく観察される.このことについて,本書第2章では,著者の観察記録と先行研究のレビューに基づき議論を深めた.睡眠は脳のグローバルな状態であるとされてきた.しかし,本書で多くの事例を示したように,時間的空間的に部分的な睡眠が多く報告されている.これらに基づき,第3章では,睡眠と覚醒との連続性について議論を行った.