金銭の出納を記録する方法に比べて取引を目的と結果の両面から記録する複式簿記は、見通した経営の将来を会計報告に引き写すことを可能にします。複式簿記は、行為をその目的と結果に分けて記録するからです。米が流通の中心にあった江戸時代、「年末にお支払をします」の約束で売買が行われました。先を見る商人は、回収の見込みのない売掛けを評価します。江戸時代の商人も貸倒引当金を計上していました。綿の輸送は菱ひ垣がき廻かい船せんによっていましたが、海難事故も多く廻船損失引当を計上するようにもなります。巧みな経営は将来を予想し、これに対応する能力が、他人よりも優れていることから生まれます。模索されている行政のあるべき会計報告には、首長の能力を適切に書き写すことが求められます。