多くの自治体がバランスシートを作成するようになった。しかし、バランスシートを作ることが会計報告ではない。会計報告の本質は、自己の行為の正当性を説明する点にある。税の運用責任者は、選挙によって信任を与えた主権者から委ねられた税の運用の結果を伝えることで正当性を説明する。民主主義により政府が運営されるのであれば、そこで伝えられる業績測定の指標は均衡財政を維持したか・しなかったかである。均衡財政を損なっているのであれば、均衡財政を実現するために貢献したか・しなかったかを伝える。税の運用責任者が本来守るべき約束を改めて確認することで、自治体が作成するバランスシートが伝えるべき情報は明らかになった。「将来の税金」として表示される子供にまわしたツケを明らかにすることである。これまで行政のコストは主権者の負担として捉えられてこなかった。住民は子供にツケをまわして安価なサービスを享受してきた。本来発生する費用の全額を負担するのであればとてもそのサービスを求めなかったものも多くある 。その結果、現在のコストを子供に先送りする財政運営が恒常化している。先ず、税の運用責任者の財政運営の巧拙を判断できる情報が提供されなければならない。その後ようやく住民は、民主主義により選ばれた税の運用責任者に求められる約束を守る能力、すなわち均衡財政を維持する能力を評価することが可能になる。人々が自治体をつくる。つくられた自治体が人々にとって有効に機能するためには、人々との係わりにおいてどのように税の運用責任者が影響したかを伝える会計情報が必要なのである。