取引は、能力のある者を見出し尊重する。市場が誕生した頃は、手に取って吟味することができる財が取引の対象であった。株式市場とともに発達した企業会計は、経営者の利益を獲得する能力を評価した。経営者に資本を委ねた株主は、会計報告により、経営者の利益獲得能力を評価することが可能になった。株主が選択をするのは、企業の行う個別の取引ではない。主権者が選択をするのは政府の行う個別の公共財の取引ではない。株主が選択するのは、資本の運用を委ねる経営者である。主権者が選択するのは、税の運用を委ねる行政責任者である。会計は、複雑な事象を整理し、見えない事実を見える様にする。信用は約束を守ることから生まれる。有用な会計情報を提供することで資本は利益を獲得する者を見出し、税収の範囲で政府を運営する者を見出し、次世代に環境を損なうことなく継承することを可能にする。会計責任が負った者が『ありがとう』というに値する者か・否かを伝えるのである。