第26章 人と会計 367-383
会社経営者に対して否定的な論評を加えたアダム・スミスは、権力者に対してはさらに否定的な論評を残している。「人類の支配者の暴力と不正行為とは昔ながらの悪徳」であるとして、「これを救治しようにもその余地はほとんどありえない 」とした。岩倉使節団も、議会制民主主義について「悪い政策が採用される」のを常とすると、否定的であった。
企業会計は、資本と利益を峻別することで、経営を委ねることのできる適材を見いだした。政府会計においても、適材である権力者を見いだすためには、主権者の物と権力者の預かる物とを峻別して、始めて「この人で良いのか」を明らかにする会計情報となる。
市場においても企業においても、また行政においても、無能な受託者から有能な受託者への資源の移動は、適切に会計をおこなうことで実現する。