わが国では、所得格差の拡大が顕著となっている。しかし、わが国における 所得格差是正は多くを社会保障による再分配に頼るもので、税による再分配は 限られている。そこで、本稿では、わが国の所得格差と所得再分配における課 題を把握するとともに、カナダの GST クレジット制度、モンゴルの Ebarimt 活用した VAT 還付制度を参考に、わが国において消費税の逆進性に対応しう る消費税の給付付き税額控除制度導入案と導入による課題を検討した。 わが国への消費税の逆進性に対応し得る給付付き税額控除制度導入案として は、まず、カナダの GST クレジット制度を基礎とし、年間所得に応じて低所 得者や低所得世帯ほどその還付割合を大きくしつつ、一定の所得で打ち切る制 度として導入を検討する。そして、制度導入と同時に、モンゴルの Ebarimt を活用した VAT 還付制度を基礎とし、事業者のデジタルインボイス発行義務 化とデジタルインボイスをデジタルデータとして取り込むシステムを構築し、 マイナンバーと紐づける制度を整える。 このように、消費税の給付付き税額控除制度導入とともに税務におけるデジ タル化を進めることで、年間所得を正確に把握し、一定の基準を上回る高い所 得を得る者への還付を排除する。さらに、本システムを構築することで、簡素 な制度として円滑に消費税の給付付き税額控除制度導入の実現が期待できる。