本研究では自分が受けた試験の点数に対する自己評価は,どこまで正確なのか検討する
こと,およびその自己評価が自己愛や自尊感情とどのような関連が見られるのか検討する
ことを目的とし,質問紙調査を行った。分析の結果,自分の試験結果に対する予想得点は
実際の得点よりも有意に低く見積もられるが,予想得点と実際得点の間には中程度の正の
相関がみられ,ある程度正確に予測されていることが示された。
また,予想得点に影響を与える要因は,自尊感情ではなく自己愛であり,自己愛が高い
ほど予想得点を高く見積もることが示された。さらに,実際の得点と予想得点の差と実際
の順位との関連を検討したところ,順位が低い学生ほど自分の得点を高めに評価する傾向
が見られた。
そこで試験の高得点群と低得点群に分け検討した結果,試験の高得点者には見られない
が,低得点者には自己愛が強い人ほど自分の点数に対する過大評価が大きいことが示され
た。以上の結果から,自分の試験の点数に対する過大評価の程度は,自己愛が強いと大き
くなり,特に自分の実際の点数が良くないときにそれが顕著になることが示された。