アメリカは芸術舞踊の伝統をもたなかったにもかかわらず、今世紀後半には世界の舞踊界の中心地となった。その原動力は、この多民族国家における相異なる価値観がぶつかることによって生まれた「矛盾」を昇華しようとする作用にあったのだ、ということを論じた。ここで言う「矛盾」とは(1)ショーダンスは蔑視されながらもダンサーの大きな収入源になり得たこと、(2)黒人が蔑視されながらもブラックダンスは真に人々の心を捉えていたこと、(3)ロシア人の移住者たちは社会的、民族的偏見から逃れており、美学的な視点から舞踊を眺めていたこと、があげられる。