マスメディアが第4の権力と位置付けられるのは、不特定多数に同じ情報を瞬時に共有させ、事象に対する同じ評価や認識、態度等を浸透させる力を有するからで、ラザースフェルドやカッツ等はこれを皮下注射理論、弾丸理論として伝統的に分析した。しかし、政策決定過程や世論形成に大きな影響を及ぼすこのメディア特性は、今、ICT技術の発達によるパーソナルメディアの台頭により、パラダイムシフトに直面している。本稿では、東日本大震災時の福島第一原子力発電所事故を事例に、専門家からなるネットコミュニティが如何にマスメディアの編集権を一部吸い上げ、政策決定に影響を及ぼしたか、分析を試みるものである。