古代エジプト文明の聖刻文字は, 表意文字および表音文字を併せ持っている文字体系で あり, その入力システムは, 現在の日本語のコンピュータ上の入力システムと極めて似た 設計が可能であると考えられる。 そのようなコンピュータ入力のシステムの支援の下では, 古代エジプト文明の聖刻文字を, その筆記法を習熟していれば, あまり抵抗がなく入力す ることが可能となる。 これを検証するために, 今回の試作を行なった。 この入力システム を試作する意味は, それ以外に, 日本において漢字とかなをローマ字のキートップを持つ コンピュータシステム上で効率良く入力できるようにしてきた 「フロントエンドプロセッ サ」 と呼ばれるソフトウェアの資産を, 他の言語にも当て嵌めて広く利用することができ る可能性があることを証明することにもある。 また, 古代文明の研究においては, 聖刻文 字を含む古代文明のテキストに関して, 現在残されているものをコード化し, オンライン 化していく必要性に迫られている。 オンライン化によって, 文字体系および言語体系を理 解している研究者および学習者が, テキストの記述を直接見ることができ, そこに何が書 かれているかを検証し, 理解することが可能になるからである。