情報教育あるいは情報リテラシーと題されて文書の作成の基本を教える教育が、大学では1990年代より、小中高でも2000年以降本格的に行なわれてきた。しかしながら、文書の作成に関して、その表象であるところの字体やレイアウトについては、まったくと言ってよいほどの、無知あるいは旧態依然とした教育がなされているのではないだろうか。それらは、出版社の編集担当の専門技術として棚上げされており、普通の人は教わる必要がないという信仰にも近い誤解が広く一般に流布している。既に、ワードプロセッサが出版レベルと同様な高度な印刷ができるにも拘らずである。逆に、出版社の側でもレイアウトはデザイナーに任せており、ほとんどタッチしていない場合があるという状況がある。複雑だが読みやすい日本語をうまく表出していくためには、いわゆる作文と呼ばれる文や文章の構成技術と同じく、文字に関する知識やレイアウトについても系統だって教えていくべきと考える。このリテラシーの教育は、文字を書き出したときからも始まるし、ワードプロセッサを使い出したときからも始まる。このような教育の目的としては考えるべきは、それは誰のための表現かということではないだろうか。当然のことながら、その表現を受け取る、即ち、それを読む人のための配慮が、表現技法の中心として深く根づいている必要がある。この論文では、読み手に配慮した文字による表現についてのいくつかのトピックについて考えを述べていきたい。