周藤芳幸編『古代地中海世界と文化的記憶』(山川出版社、2022年)所収の論文「記憶の継承の場としてのエフェベイア」において取り上げたアカルナイ出土の2枚の石碑(SEG 21.519《デーモス決議》およびRO 88《ディオンの奉納碑》)は、現在在アテネフランス研究所長の建物の入り口の壁に展示されている。2022年9月、現地にて写真を入手し、不十分ながらあらためて検討する機会を得た。
前稿では、エフェベイアに焦点を当てつつ両碑文、とくにRO 88について考察したが、本報告ではSEG 21.519に焦点を当て、2枚の碑文の関係と建立の背景について、前稿での議論に若干の修正と補遺を試みた。とくにアレスおよびアテナ・アレイアの神域整備の時期と背景について、またアカルナイとアレス祭祀との関係、決議に見られるアカルナイとポリスとの関係について考察した。