現代日本の輸送園芸産地は、東北日本から西南日本にかけて異なる自然環境のもとで、同一種類の青果物が地域条件に応じた作付形態を背景にして市場への周年出荷が行われている。本稿は日本の野菜生産の上位を占めるタマネギを事例として、春播き秋収穫・1年単作型の北海道、秋播き春収穫・水田裏作型の兵庫県、佐賀県の産地の作物導入から主産地化の把握と経営実態の考察を通して、作付形態の差が輸送園芸産地の存在形態にどのような影響をあたえつつ、産地の持続的発展が見られるのかを考察したものである。後継者難と高齢化が進行する日本において、耕種農業で高収益をあげるためには規模拡大・効率性・生産性向上を進める一方で、重労働から逃れることが求められる。このことからみて、程度の差はあるが、開拓地を起源とする北海道、有明海の干拓地を前身にもつ九州の佐賀県のような経営規模が総じて大きく、機械導入が可能な遠隔地への産地の立地移動がゆるやかに進行していることが明らかとなった。